生前の整理を進める際、最も重要な課題は財産の整理です。
自分が生きている間に、家族や大切な人々のために財産をどのように扱うかを考えることはとても重要です。
相続する家族がいる場合、財産を家族に遺すことが一般的ですが、相続する側には相続税を支払う義務が生じます。
また、財産の分配をめぐって家族間でもめるリスクも否めません。
一方で、相続人がいない場合には、自分が亡くなった後に残る財産をどのように扱うべきかを慎重に検討する必要があります。
中には、「自分の財産を社会の役に立てたい」と考える人も少なくありません。
そんな方にとって、「遺贈寄付」という仕組みはとても魅力的です。
本記事では、この遺贈寄付について詳しく解説し、その意義や方法、注意点などを紹介します。
遺贈寄付とは
遺贈寄付とは、社会貢献活動に役立てることなどを目的に、被相続人の遺産を遺言によって特定の団体に譲ることを言います。
遺贈寄付は、個人の意思を直接的に社会に反映できる手段の一つであり、その社会的意義はますます注目されています。
たとえば、医療や教育、環境保護など、寄付先の選択によって自分の財産が具体的にどのような形で社会貢献に役立つのかを明確にイメージすることができます。
遺贈との違い
「遺贈」とは、遺言によって財産を無償で譲与すること。
一般の遺贈は自分の相続財産を第三者に単に分け与えることです。
一方で、遺贈寄付は公益的な活動をする団体へ相続財産を譲与することにより、その団体の活動を支え、社会的課題の解決や社会貢献につながることが大きな違いです。
具体的には、寄付先の団体が行う事業が地域社会や国際社会においてどのような影響を及ぼすかが重要なポイントとなります。
寄付との違い
「寄付」とは生前に金銭や物品を無償で非営利団体等へ譲ること。
遺贈寄付は、亡くなった際に遺産の一部もしくは全てを無償で非営利団体等へ譲ることをいいます。
生前は多額の寄付はできなくても、自分が亡くなった時に残った財産の中から一部を遺贈寄付するのであれば、意外に大きな金額を寄付できる場合もあります。
遺贈寄付のメリット
遺贈寄付にはどんなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
財産の使い道を自分で決められる
死後、財産を引き継ぐ先を自分の意思で決めておくことができます。
自分が関心のある分野への貢献ができるのは最大のメリットです。
例えば、医療支援を行う団体に寄付することで、将来の命を救うための活動をサポートできます。
また、教育機関への寄付は、未来の世代の育成に役立つでしょう。
このように、自分の価値観に合った使い道を具体的に選択することが可能です。
税金の控除を受けられる可能性がある
相続税や所得税が軽減される可能性があります。
しかし、遺贈寄付の方法や寄付先団体の種類によって、適用される場合とされない場合があるので注意しましょう。
たとえば、公益法人に寄付を行う場合は税制上の優遇措置が受けられるケースが多いですが、その適用条件については専門家に相談することが重要です。
相続トラブルを回避できる
遺贈寄付を計画的に行うことで、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
特に財産の分配に関して事前に明確な意思を示しておけば、相続争いのリスクを減らせます。
また、遺贈寄付は家族間の関係を円滑に保つための調整手段としても活用できます。
親族間の感情的な衝突を防ぐためにも、遺言書に具体的な指示を記載しておくと良いでしょう。
遺贈寄付の方法
遺贈寄付の方法には大きく分けて3つの種類があります。
自分に適した方法で遺贈寄付を行うためには、まずその選択肢を理解し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
遺贈寄付を実施する際には、遺言書の作成が必須となりますが、遺言書には作成方法に一定の決まりがあるため、専門家に相談しながら手続きを進めることをお勧めします。
それでは、遺贈寄付の方法について詳しく解説していきます。
遺言による寄付
遺言書に自身の財産を寄付する旨を記載しておく方法。
受取拒否などにならないよう、寄付先の団体には寄付の旨を伝えておきましょう。
また、遺言書には具体的な財産の内容や分配方法を明記することで、手続きがスムーズに進む可能性が高まります。
相続財産の寄付
遺産を受け取った相続人が寄付する方法。
あらかじめ相続人に寄付したいという意思表示をしなければなりません。
手紙、エンディングノートや遺言書に記しておくとよいでしょう。寄付先には何を寄付するのか知らせておきましょう。
さらに、相続人が寄付を行う場合、税制上の優遇措置を受けられる可能性についても確認が必要です。
生命保険や信託など契約による寄付
死亡保険金や生命保険契約によって生じた利益部分を寄付する方法。
保険会社との契約や保険契約の管理・運用を信託銀行に任せることによって行うことができます。
この方法は、遺言書を作成しなくても契約内容に基づいて寄付を行えるため、より簡便に実現可能です。
遺贈寄付の注意点
遺贈寄付を行う際には注意点があります。
のちのトラブルを防ぐためにもしっかりとした配慮が必要です。
相続人に配慮
残された家族や相続人との生前の関係や心情などにも十分配慮した財産配分をし、寄付を行いましょう。
特に、全財産を寄付に充てる場合は、家族や相続人の理解を得るために十分な話し合いを行うことが重要です。
寄付相手に配慮
寄付を受ける団体も、あらゆる財産や条件で遺贈寄付を受けられるわけではありません。
事前に確認しておきましょう。
寄付先の団体が受け入れ可能な財産の種類や寄付手続きに必要な書類について、具体的に問い合わせを行うと良いでしょう。
法的トラブルを避けるための準備
遺言書の不備や寄付条件の曖昧さが原因で法的トラブルになる可能性があります。
公証役場での遺言書作成や、弁護士・司法書士への相談を通じて確実な手続きを行いましょう。
さらに、遺言執行者を指定しておくことで、手続きが円滑に進むように備えることができます。
遺贈寄付の寄付先
寄付先は主に自治体と民間非営利団体の2つにわけられます。
非営利団体には、学校法人、公益財団法人、NPO法人などがあります。
支援したい分野の団体などで寄付先を決めましょう。
いろいろな団体がありますが、一部抜粋してご紹介します。
・日本財団
・東京大学
・大阪大学
これらの団体は、それぞれ異なる活動分野に取り組んでおり、寄付を通じて自分が特に関心のある分野を支援することが可能です。
寄付先に困ったら
団体のホームページや相談窓口を確認してみましょう。
また、相談窓口が設けられている自治体もありますので、気軽に相談してみると良いでしょう。
たとえば、「具体的にどんな団体があるのか知りたい」や「手続きが不安」などの質問も歓迎されるはずです。
遺贈寄付の相談事業を行っている団体に相談するのもよいでしょう。
また、遺贈寄付を取り扱う専門機関や中立的なアドバイザーに相談することで、より具体的なアドバイスを受けられる可能性があります。
遺贈寄付するならしっかりと準備しよう
遺贈寄付をするなら、しっかり考えて共感できる団体を選ぶことが大切です。
寄付先の活動内容や信頼性を確認し、事前に相談を重ねることで、後悔のない選択ができます。
また、家族や相続人と十分に話し合い、遺言書などの必要書類をきちんと整えることで、トラブルを避けることができます。
遺贈寄付は、社会に貢献できる素晴らしい選択肢です。
生前整理の一環として取り入れるのも一つの方法です。ぜひ、自分に合った形で検討してみてください。
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