私たちは日々、動画配信や音楽ストリーミング、クラウドサービスなど、様々なサブスクリプション(サブスク)に登録し、利用しています。
これらのサービスは自動更新されるため、支払いを忘れることも少ないですが、気になるのが「もし自分が亡くなったら、これらのサブスクはどうなるのだろう?」という点ではないでしょうか。
多くのサブスクは、契約者が自ら解約しない限り、契約が自動で更新され続けるため契約者が亡くなった後も、料金が引き落とされ続ける可能性があります。
特に、遺族が契約に気づかない場合、長期間にわたって支払いが続くことも考えられます。
デジタル時代における契約管理は、私たちの死後の財産処理の一環として考え、対策しておく必要があります。
本記事では、死後のサブスク契約や解約、そして事前対策について解説します。
「サブスク」契約者の死後はどうなる?
サブスク契約者が亡くなったら、その契約はどうなるのでしょうか?
日々の生活に便利なサブスクですが、契約者がいなくなったあとも自動更新されるケースが多いため、相続人には予想外の負担が発生することもあります。
特に、契約解除をしないまま放置すると、利用しないサービスに対して毎月の支払いが続き、気づかないうちに多額の費用が発生する恐れもあります。
ここでは、契約者の死後に契約がどのように扱われるのか、知っておくべきポイントを詳しく見ていきましょう。
継続される
サブスクは、ほとんどのケースで自動更新され、支払いも毎月一定額が自動で引き落とされます。
契約者が亡くなった場合でも、サービス提供会社が契約者の死亡を知る仕組みは基本的にありません。
そのため、契約者が死亡しても契約は解約されることなく、継続します。
民法第896条には「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する」と明記されています。これに基づき、サブスク契約も相続人に引き継がれることになります。
したがって、相続人が解約を行わない限り、契約は継続し、支払いも続くことになります。
また、相続人が解約手続きを行うためには、故人の契約情報や支払い状況を把握する必要がありますが、それらの情報を簡単に見つけることができない場合も少なくありません。
家族が気づかないまま引き落としが続いたり、あるいは未払いが発生して延滞金がかかったりすると、後々の負担が大きくなる可能性があります。
相続放棄の場合は支払い不要
もし相続人が相続放棄をした場合、解約手続きをしなくても支払い義務は発生しません。
相続放棄を行えば、サブスクの契約に関する債務もすべて免除されます。
放置のリスク
サブスク契約を放置してしまうと、どんなリスクがあるのでしょうか?
ただ契約を残したままにしておくだけで、思わぬ負担やトラブルが発生することもあります。放置することで生じるリスクについて説明します。
費用を請求される
サブスク契約が自動更新され、毎月費用が引き落とされることが続く可能性があります。
契約者の口座が凍結された場合、サービス提供会社は引き落としができなくなり、延滞金が発生することも考えられます。
この場合、サービスの利用が停止されるだけでなく、未払い分の請求も発生するため、放置すると後で大きな負担になることもあります。
不正利用
契約が放置されたままだと、不正利用のリスクも高まります。
アカウント情報が流出したり、第三者に不正に利用されたりする可能性があり、特に支払い情報や個人データが含まれている場合は注意が必要です。
無料のサービスであっても、不要な契約は解約することをおすすめします。
個人情報漏洩
故人のアカウントを放置すると、個人情報の漏洩が起こるリスクもあります。
故人の情報だけでなく、家族の情報もアカウントに含まれている場合があり、そのため、家族に関する情報が外部に漏れる危険もあります。
こうしたリスクを避けるためにも、早めの解約が重要です。
デジタルデータ(遺品)の消失
クラウドストレージやオンラインフォトサービスなどに保存されているデータも、アカウントが放置されていると失われる可能性があります。
例えば、契約者が亡くなってそのまま放置されると、サービス提供会社が契約終了やサービス停止を決定することがあり、これによって保存されていた写真やドキュメントが削除されてしまう恐れがあります。
これらのデータは、家族にとっても大切な「デジタル遺品」として残ることが多いため、適切なバックアップやデータの移行を行い、思い出を失わないようにすることが望ましいです。
デジタル遺品に関する相談は年々増加傾向
近年、デジタル遺品に関する相談が増加しており、整理を請け負う会社も増えています。
文春オンラインの記事によると、日本PCサービス株式会社の発表では、デジタル遺品に関する相談件数は2020年9月~2021年7月で306件と、前年同時期の130%に達し、増加傾向にあるとのことです。
特に遺族からは「残されたデジタル機器のパスワードが分からない」「解約したいが、故人がどのサブスクに登録していたか分からない」などの相談が増加。
登録した本人しか詳細が分からず、残された家族が困る場面も増えています。
参考:文集オンライン「SNSやサブスク契約はどうなる…? “立つ鳥跡を濁さず”逝くための孤独死マニュアル」
サブスクサービスの整理方法
サブスクを適切に管理するには、登録しているサービスを把握し、不要なものを解約する必要があります。
以下に、サブスク整理の手順をご紹介します。
登録しているサブスクサービスを書き出す
まず、現在登録しているサブスクサービスを書き出しましょう。
把握しきれていないサブスクがないか、アプリやメールを確認して見逃しがないように注意します。
引き落とし口座やカード明細を確認することも有効です。
ジャンルごとに分けて見直す
サブスクにはさまざまなジャンルがあります。
整理する際は動画サービスやネットショッピングといったジャンルごとに分けると、用途が重複しているサービスが分かりやすくなります。
使わないサブスクを解約する
登録しているサブスクが確認できたら、解約または継続の判断をします。
サブスクごとに解約手続きが異なるため、事前に確認が必要です。
解約手続き
解約手続きはサービスによって異なります。
公式サイトやメール、電話で提供会社に問い合わせて、具体的な手順を確認しましょう。
クラウドサービスには注意
クラウドサービスの解約には特に注意が必要です。
データが残っていないか、必ず確認してから解約手続きを行いましょう。
大切なデータを失わないよう、事前にバックアップを取ることも忘れずに行いましょう。
もしもの時に困らないためには?
もしもの時に備えて、デジタル遺品リストを作っておきましょう。
リストアップする項目の例
- 端末のロック解除方法
- 退会が必要なサイトとその ID やパスワード
- ネット関連の金融資産など
参照:見守り新鮮情報 第430号(2022年9月6日) 独立行政法人国民生活センター発行
家族と共有しておこう
いつ何が起こるか分からないため、サブスク契約情報は早めに整理しておくことが大切です。
生前整理の一環として、エンディングノートなどにデジタル遺品リストをまとめ、家族と情報を共有しておくと安心です。
情報が整理されていれば、万が一の際もスムーズに対応でき、トラブルを未然に防ぐことができます。
コメント