誰にも看取られず、ひっそりと亡くなる 。
そんな「孤独死」は、決して特別な出来事ではなくなりつつあります。
特に高齢の一人暮らしの方にとっては、日常の中に潜む身近なリスクです。
「自分は大丈夫」と思っていても、突然の病気やケガで助けを呼べない状況に陥る可能性は誰にでもあります。
孤独死は本人だけでなく、遺族や近隣にも大きな影響を及ぼすため、予防と備えが欠かせません。
この記事では、孤独死の現状と注意すべき環境、そして今すぐできる対策や生前整理のポイントまで、わかりやすくご紹介します。
孤独死の現状
近年、日本では少子高齢化が進行し、高齢者人口が急増しています。
それに伴って、一人暮らしをしている高齢者も増加の一途をたどっています。
総務省のデータによると、65歳以上の高齢者世帯のうち、約20%が「単独世帯」だとされており、その割合は今後も高まると予測されています。
このような背景から社会問題となっているのが「孤独死」です。
孤独死とは、誰にも看取られることなく自宅などで亡くなり、一定期間誰にも気づかれない状態を指します。
特に都市部では深刻な問題として取り上げられています。
孤独死は誰にでも起こり得る問題ですが、特に注意が必要な環境や状況があります。

こんな環境は要注意
孤独死のリスクが高い人には、特徴があります。
その特徴を見ていきましょう。
一人暮らし
家族と離れて暮らしている、または身寄りがいない場合は、体調などの異変に気づかれにくくなります。
高齢になるにつれて、転倒や持病の悪化など、急な体調変化が命に関わることもあります。
しかし、誰にも気づかれず救助が遅れれば、助かるはずの命が失われてしまうこともあるでしょう。
誰ともコミュニケーションを取っていない
近所づきあいが希薄だったり、電話やメールなどでやり取りする相手がいないと、体調の変化にも周囲が気づくことができません。
たとえ近所に知り合いがいたとしても、頻繁に連絡を取る関係でなければ、何日も誰にも会わずに過ごすことも珍しくありません。
持病がある
糖尿病や心疾患などの慢性疾患を持っている場合、急変が起きやすく、助けを呼べないまま亡くなる可能性もあります。
経済的に困窮している
金銭的な余裕がないと、見守りサービスや介護支援を受けることができず、社会との接点も減ってしまい孤立が深まりやすくなります。
このようなリスク要因が重なることで、孤独死の可能性が高まっていくのです。
男性は特に注意
孤独死の約8割は男性であるというデータがあります。
東京都監察医務院の統計によれば、孤独死とみられる事例のうち、実に83.1%が男性です。
その背景には、以下のような事情があると考えられています。
- 料理や家事が苦手な傾向があり、健康的な生活を維持するのが難しい。
- 退職後に社会的なつながりを失い、地域活動や趣味などに参加しづらい。
- 助けを求めることにためらいを感じ、自分の不調や不安を周囲に相談できない。
配偶者に先立たれ、孤立する男性高齢者が増えているのが現状です。
男性の独居は女性に比べて、人との会話や付き合いが苦手という人が多いため、孤立しやすく孤独死に繋がりやすいのです。
孤独死がもたらす影響
孤独死は、当人だけでなく、周囲や家族にもさまざまな影響を及ぼします。
実際にどんな影響があるのでしょうか。
不動産価値の下落
持ち家や賃貸住宅で孤独死が起きると「事故物件」と見なされ、物件の資産価値が下がることがあります。
原状回復費用の請求
賃貸住宅の場合、遺族が原状回復や特殊清掃にかかる高額な費用を請求されることがあります。

遺族への精神的・経済的負担
遺体の発見が遅れることで遺族のショックが大きくなり、遺品整理や手続きの負担も重くのしかかります。
近隣住民への迷惑
悪臭や害虫の発生により、隣人とのトラブルに発展するケースも少なくありません。
こうした問題を防ぐためには、孤独死を未然に防ぐ対策を日頃から講じておくことが大切です。
孤独死を防ぐための10の対策
孤独死リスクを軽減するために、10の対策をご紹介します。
できることから実践してみましょう。
①家族や友人と定期的に連絡を取る
毎週1回、決まった曜日に家族に電話するなど「安否確認の習慣」をつけましょう。
LINEやメールでも構いません。
②健康的な生活を意識する
栄養バランスの取れた食事と適度な運動、定期的な健康診断が重要です。
生活リズムの乱れは体調悪化のもとになります。
まずは健康的な生活を送ることからスタートしましょう。
③地域とのつながりを持つ
町内会の行事に参加したり、近所の人に挨拶をするだけでも、何かあったときの気づきにつながります。
積極的につながりを持つようにしましょう。
④SNSやオンラインコミュニティの活用
趣味や興味を共有する仲間を作ったり、自分のライフスタイルを発信したりと、オンラインでも人と繋がることはできます。
⑤自治体の見守りサービスを利用する
多くの市区町村では、高齢者向けに電話や訪問による安否確認サービスを提供しています。
費用は無料〜低額なものもありますので、積極的に利用しましょう。
⑥地域包括支援センターに相談する
地域包括支援センターとは、高齢者が健康や介護、生活の不安について相談できる窓口です。
孤立を未然に防ぐためにも、悩みがあれば気軽に相談してみましょう。
⑦配食・宅配サービスの利用
安否確認を兼ねて食事などを届けてくれるサービスがあります。
栄養バランスの良い食事を摂ることができる上、決まった時間に訪問があることによって、異変の早期発見にもつながります。
⑧見守り家電やカメラの導入
テレビや冷蔵庫などの家電の使用状況で、利用者の安否を把握できる「見守り家電」もあります。
センサー付きのライトやカメラも効果的です。
⑨民間の見守りサービスに登録する
IoT技術を活用した見守りや、緊急通報サービスも充実しています。
費用や機能を比較し、適したものを選びましょう。
⑩介護施設の利用
老人ホームなどの介護施設なら、毎日、多くの人たちと関わることができるだけでなく、介護士による介護や、看護師による医療ケアも受けることができます。
一人での生活が不安であれば、老人ホームやシニア向け住宅への入居も選択肢に入れてみましょう。
早めに情報収集しておくことで、スムーズに入居することができます。
家族ができる備え
一人暮らしの高齢者本人や、その家族ができる「生前整理」に取り組みましょう。
「エンディングノートの作成」や「連絡先・医療情報の共有」「財産・契約の整理」などの生前整理を行っておくことも重要です。
これにより、万一のときにも家族がすぐ対応できるようになります。
孤独死を防ぐために今できること
孤独死は、対策を講じていない場合、誰にでも起こり得る現実的なリスクです。
しかし、日常の中でできる小さな習慣や、生前整理を含む備えを少しずつ始めていくことで、大きな安心につながります。
高齢の一人暮らしの方はもちろん、ご家族も一緒に話し合い、必要な支援やサービスを活用することが重要です。
孤独死を防ぐために、「誰かとつながり続けること」「備えておくこと」から、できることを始めてみましょう。
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