延命治療とは、回復の見込みがなく死期の迫った患者様に対して、点滴や呼吸器などによって延命を目的とした治療のことです。
終末期ケアとも呼ばれますが、延命治療を続けるか、いつ治療を中止するかといった選択は、本人の意思が尊重されますが、意思表示がない場合は家族が決断が委ねられます。
事前に延命治療に対する意思表示をしておくことは、自分自身の想いを尊重するだけでなく、家族にとっても精神的負担が軽減されるでしょう。
特に高齢のご両親や家族がいらっしゃるご家庭では、延命治療の意思表示を考え準備をすることが、終活の重要な一歩となります。
この記事では、延命治療の意思表示についての基本情報、その必要性、意思表示の方法、家族とのコミュニケーションの取り方などに焦点を当て、終末期における医療の決定について、より良い理解と準備ができるように解説します。
延命治療とは
延命治療とは、通常の治療とは異なり、回復の見込みがなく延命を目的とした治療です。
具体的な治療として、人工呼吸器の使用、心肺蘇生法(CPR)、経管栄養、透析などが挙げられます。
治療により生命を維持できる一方、長期間にわたる延命治療は、患者様の苦痛を伴うことがあり、ご本人が望む生活の質を得られない可能性もあるのです。
また、延命治療を続けることで、患者様やご家族にとって精神的・経済的な負担につながることも考えられます。
延命についてはさまざまな考え方や意見がありますが、延命することだけが最善の選択とは限らず、患者様本人の意思を尊重した上で方向性を決定する必要があります。
なぜ延命治療の意思表示が必要なのか
死期の近い終末期医療において、患者様本人の意思を明確にすることは、治療方針を決定する上で重要な役割を果たします。
延命治療の意思表示の必要性は主に下記のとおりです。
- 家族間の意見の不一致を避ける
- 精神的負担の軽減
- 本人の意思を尊重した治療方針の実現
特に終末期ケアに関しては、急変が起こる可能性も高く迅速な判断が求められることがあります。
患者様ご本人が明確な意思表示をしておくことで、治療に対する希望が医療チームに伝わり、希望に沿った治療を受けられる可能性が高まります。
また、患者様本人による延命治療の意思表示がない場合、家族間で治療方針の意見が分かれることがあります。
家族にとっては、精神的なストレスとなり、場合によっては解決が難しい状況に発展することもあるでしょう。
事前に患者様本人が自分の意向を家族に伝えておくことで、家族はその意向に沿って行動ができ、意見の不一致を防ぐことができます。
意思表示の方法
延命治療に関する意思表示を伝える方法として、リビングウィルの作成や「尊厳死宣言公正証書」などがあります。
また、入院時に延命治療に関する意思確認を行う場合も少なくありません。
リビングウィルとは
リビングウィルは、自身が終末期の状況や重篤な健康状態にある際に受けたい、または受けたくない医療治療について記した文書です。
この文書では、人工呼吸器の使用や心肺蘇生法(CPR)、経管栄養など、具体的な治療法に対する自己の意向を明確に記載します。
具体的な書き方や項目などのルールはありませんが、公益財団法人「日本尊厳死協会」や医師会などがフォーマットを提供しています。
尊厳死宣言公正証書とは
尊厳死宣言公正証書とは、「回復の見込みのない状態において、延命治療を望まず、人間として自然な形で尊厳を保ったまま死を迎えることを望んでいる」という内容を公正証書として作成するものです。
自身の治療内容の方針の希望を記述する文書という点においては、リビングウィルと扱いは一緒です。
ただし、公証役場で公証人が聴取を行い、公正証書に残すという点においては「証拠力」が強く、尊厳死宣言公正証書の方が情報の信頼性が高いと言えるでしょう。
家族とのコミュニケーションの大切さ
延命治療の意思表示は、文書に残すだけでなく、家族に伝えることが必要です。
緊急事態が発生する前に、家族全員が参加できる時間を設け、治療方針の希望や意思を伝えましょう。
事前に自らの考えや方針を家族に伝えておくことで、緊急時にも迅速に対応が可能です。
実際の事例紹介
ここでは、元看護師である私の実体験をご紹介します。
私の祖父は数年前に亡くなりましたが、延命治療の意思表示を家族に伝えていませんでした。
当時、膵臓癌の手術のために入院しており、手術翌日に急変し、家族が病院に到着した時点で人工呼吸器を装着され、延命治療が行われた状態。
家族も病院も事前に祖父の延命治療に関する意思表示は把握しておらず、延命治療が開始されました。
しかし、延命であり回復の見込みがないため、私たち家族はある決断を求められたのです。
「いつ人工呼吸器を外すのか」
担当医から延命治療をいつまで続けるのか、という相談を受け、残される家族にとっても大きな負担となりました。
「人工呼吸器を外す=亡くなる」という決断を迫られ、非常に悩んだ記憶があります。
延命治療が祖父にとって苦痛になることも分かっていますが、本人の意思がわからない以上、非常に難しい決断でした。
元看護師からのアドバイス
延命治療に関する考え方は人それぞれです。
だからこそ、本人の意思や希望が重要になります。
ご本人の意思が確認できない場合、家族が代わりに決断をすることになります。
命に関わる意思決定は、精神的にも負担が大きく、家族にとっても辛い経験です。
また、緊急時に迅速な判断を行うためにも、ご本人の意思を家族が把握しておくことも大切です。
患者様ご本人と家族が後悔のない選択ができるよう、終活を通して準備されておくことをおすすめします。
終活は家族で行うことが大切
延命治療の意思表示は、自分自身や愛する家族の終末期におけるケアをどのように進めたいかを明確にするための重要な手段です。
自身の意思を家族に伝えることで、意思が尊重され、家族にとっても負担の軽減につながります。
また、医療機関にとっても希望に沿った適切なケアを提供するための明確な指針となるでしょう。
終活の準備は簡単ではありませんが、自己決定の尊重、そして残される家族の理解と協力のためには重要な一歩です。
この記事が延命治療の意思表示への理解を深めるきっかけになれば幸いです。
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