遺言書は「自分の財産をどのように残したいか」などの意思表示を伝えるための手段です。
遺言書がなければ、相続に関するトラブルなどが起こり、残された家族が揉めることも考えられます。
逆に遺言書があれば、相続の手続きも円滑に進み、家族にとっても負担が軽減されるでしょう。
今回は、遺言書がない場合に何が起こるのか、遺言書の必要性とその作成によるメリットについて、相続に詳しい専門家が監修の元、詳しく解説します。
遺言書がないとどうなるのか?
遺言書がない場合、以下のようなことが起こる可能性が考えられます。
- 法定相続分に従う遺産分割
- 相続トラブルの発生
- 特定の人や団体への遺産分与が困難
特に相続トラブルは家族間の関係悪化も考えられるため、残された家族にとっても負担となるでしょう。
それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。
1. 法定相続分に従う遺産分割
遺言書がない場合、現金などの金銭の遺産は法定相続分に従って分割されます。
これは法律で定められた割合であり、家族の希望や特定の事情を考慮することができません。
例えば、子供に遺産を与えず、配偶者に全て渡したいと希望していた場合、遺言書がなければ考慮されず、法定相続分に従って分割されるのです。
ただし、相続人の間で法定相続分とは異なる遺産分割協議を行うことも可能ですが、故人の想いや意思を全て反映させることは難しいでしょう。
2. 相続トラブルの発生
遺産分割において、相続人同士で意見が分かれることが多く、トラブルに発展することがあります。
遺産分割協議は相続人全員の合意する内容でなければ成立しないため、遺産の額や種類が多い場合は、話し合いが長引く可能性も高いでしょう。
話し合いでもまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。
調停でも決着が付かない場合は、裁判官が遺産分割方法について一方的に判断を下す「審判」になります。
調停や審判などは場合によっては2、3年以上の時間を要する場合もあり、残された家族にとっても負担が大きいでしょう。
3. 特定の人や団体への遺産分与が困難
遺言書がない場合、特定の親族以外の人や団体に遺産を分配することが難しくなります。
例えば、自分の遺産を特定の団体に寄付してほしいなどの希望がある場合は、遺言書に記載しておく必要があります。
遺言書が必要な理由と作成するメリット
遺言書は、財産の持ち主である被相続人の意思表示を伝えるために必要です。
遺言書があれば、被相続人の意思に基づき、財産を相続分割ができるようになります。
また、相続人以外に財産を渡すことも可能になります。
ここでは、遺言書が必要な理由について解説していきます。
1. 遺産分割の明確化によるトラブルの回避
遺言書を作成することで、遺産分割の方法を明確にし、相続に関するトラブルを防ぐことができます。
家族全員が納得する形で遺産を分配できるため、安心して遺産を受け取ることができるでしょう。
例えば、家族間の仲が悪く、法定相続人の中に相続をさせたくない人がいる場合、遺言書に明記すれば、法定相続人より遺言の内容が優先されるため、相続トラブルが大きくなることを防げるでしょう。
また、主な相続財産が不動産の場合は分割できないため、話し合いによる解決が難しいケースもあります。
事前に家族で話し合いを行い、遺言書を残しておくことが必要です。
2. 法的な効力により尊重される
法律に定められたルールに従って作成された遺言書は、法的に認められた書類であり、その内容が尊重されます。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のそれぞれに法的効力がありますが、形式や内容に一定の要件があります。
また、遺言書において法的な効力を持つ内容は決まっています。
- 遺産分割方法の指定
- 相続人の廃除、排除の取り消し
- 生命保険受取人の指定、変更
- 遺贈
- 婚外婚の子の認知など
遺言書の内容は相続においては、被相続人の意向として尊重され、最優先事項になります。
3. 家族の将来を守る
遺言書を通じて、家族の将来を守るための具体的な指示を残すことができます。
相続の対象となるのは現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も対象です。
例えば、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、遺言書に残しておくことで、残される家族は「限定承認」や「相続放棄」という選択肢が与えられます。
マイナスの財産を相続させたくない場合は、遺言書に記載することで家族の将来を守ることにもつながります。
遺言書の種類と作成にかかる費用
法的に効力を持つ遺言書を作成するためには、一定の要件を満たす必要があります。
遺言書の種類と作成にかかる費用は下記のとおりです。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成方法 | 自分で記述 | 公証人が記述 | 本人(自筆・代筆・パソコン可) |
費用 | 0円(検認の費用はかかる) | 作成手数料 | 公証人の手数料が必要、検認の費用 |
証人・立会人 | 不要 | 証人2人の立ち会い | 公証人1人、証人2人以上 |
署名・押印 | 本人のみ | 本人、証人、公証人 | 本人、証人、公証人 |
家庭裁判所の検認 | 必要(法務局管理制度利用の場合は不要) | 不要 | 必要 |
メリット | 安価ですぐに作成可能 | 公証人の確認があるため無効にならない | 自署は署名のみで良い |
デメリット | ・方式や内容によっては無効になる。 ・死後に存在を知られない可能性がある。 | 方式や内容によっては無効になる。 費用と手間がかかる | ・方式や内容によっては無効になる。 ・死後に存在を知られない可能性がある。 |
1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自分で書くため費用はかかりませんが、専門家に相談する場合の費用は別途発生します。
法務局での保管費用は数千円程度です。
手軽に作成できるメリットもありますが、一方では書き換え、発見されない、紛失してしまうなどのリスクもあります。
2. 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人の立ち会いで作成するため、手数料がかかります。
一般的には、遺産の額に応じて数万円から十数万円かかることが多いです。
公証人手数料のほかに、専門家に依頼する場合の費用も発生します。
また、公証役場で原本を保管してもらえるため、紛失・隠蔽のリスクがありませんが、費用や手間がかかる点はデメリットです。
3. 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま公証人が内容を確認せずに保管するため、自筆証書遺言と同様に内容の正確性に注意が必要です。
遺言書がある事実だけを確実にする目的になりますが、内容の要件を満たしていなければ無効になるリスクがあります。
遺言書を作成する際の注意点
自筆遺言などは自分で気軽に作成できますが、法的な効力を得るためには、一定の要件を満たす必要があります。
ここでは、遺言書を作成する際の注意点を見ていきましょう。
1. 法的要件を満たす
有効な遺言書とするために、法律で定められた要件を満たす必要があります。
形式や署名、日付の記載方法を正しく守ることが重要です。
2. 専門家のアドバイスを受ける
弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら遺言書を作成することで、法的に確実な遺言書を作成することができます。
3. 定期的な見直し
ライフステージや家庭状況の変化に応じて、遺言書の内容を見直すことが重要です。
定期的に更新し、最新の情報を反映させましょう。
遺言書は残された家族を守るために必要
今回は、遺言書がない場合に何が起こるのか、遺言書の必要性とその作成によるメリットについて解説しました。
遺言書がない場合、法定相続分に従って遺産が分配され、相続トラブルが発生しやすくなります。
遺言書を作成することで、遺産分割の明確化や意思の尊重、家族の将来を守ることが可能です。
ただし、法的に効力を持つ遺言書を作成するためには、一定の要件を満たす必要があるため、専門家のアドバイスを受けながら作成することが大切です。
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