生活保護を受給していた家族が亡くなった場合、遺品整理費用を補助する制度などはありません。
「故人が受給していた生活保護費から捻出すればいいのでは?」と考える方もいますが、残った受給費は返還の義務があります。
生活保護費は「最低限の生活を保証する制度」であるため、遺品整理は含まないのです。
しかし、葬儀費用など自治体の補助を利用すれば総合的な費用削減が可能でしょう。
今回は、生活保護受給者の遺品整理や立ち合いが難しい場合の業者選びのポイントなどをご紹介します。
遺品整理に生活保護費は充てられない
生活保護で支給されるお金の目的は、生活保護法第1条に定められています。
「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」が目的です。(※1)
つまり、生活保護費は「最低限のサポートが必要な人」に対して支払われる補助金と言えます。
生活保護受給者が亡くなった時点でお金の受給がは終了するため、遺品整理には充てられません。
また、故人が生活保護を受給していても、相続の手続きは一般の方と同じ手順で進められます。
h3見出し)遺品整理の費用を負担するのは基本的に「連帯保証人」
生活保護受給者が亡くなった場合に、費用負担者の順番連絡が来る可能性の高い順は以下のとおりです。
- 連帯保証人
- 法定相続人
- 物件の所有者
まず遺品整理の費用負担が生じるのは、連帯保証人です。
連帯保証人が支払えない場合は、法廷相続人に支払い義務が生じます。
さらに法廷相続人全員が相続放棄をしたり支払い能力がないと判断されたりした場合、最終的な支払い義務をが命じられるのは、物件の所有者です。
費用負担は上記の流れで決められるため、生活保護受給者の遺品整理費用を負担する順位が高いのは「連帯保証人」と言えます。
葬儀費用は自治体の補助が受けられる
生活保護受給者の遺品整理にかかる費用は、自治体や行政などの補助はありません。
しかし、葬儀費用は「葬祭扶助制度」を利用すれば、自治体の補助が受けられます。
例えば、家族が生活に困窮し葬儀費用を捻出できない場合や家族以外が葬儀を行う場合など、条件を満たせば利用が可能です。
生活保護受給者の遺品整理で親族が行うべきこと
生活保護受給者の遺品整理をする際に相続した親族が担う手続きなどは、主に以下のとおりです。
- 遺品整理費用の支払い
- 相続の手続き
- 遺品整理にかかる交通費や宿泊費
生活保護受給者が亡くなった場合、住宅に残された家具や日用品などの遺品整理は相続した親族が行わなくてはいけません。
遺品整理業者の利用でかかった費用は、依頼者側で支払う必要があります。
また、故人が生前に生活保護を利用していても、相続の手続きは一般の方と同様です。
生活保護を受給している方は、親族などの連帯保証人が遠方に住んでいるケースが多いでしょう。
上記の場合、交通費や宿泊費がかかるなど遺品整理を行うのが困難なケースが考えられます。
生活保護受給者の遺品整理で気をつけること
生活保護受給者の遺品整理をする際は、いくつかのポイントを押さえておきましょう。
トラブルを未然に防げ、安心して遺品整理ができます。
相続放棄する場合は遺品整理をしない
生活保護者に支給される「生活保護費」は、借金返済金には充てられません。
しかし、生活保護を受けている人のなかには、借金を抱えている人もいるでしょう。
故人の借金は親族など連帯保証人に支払いの義務が生じるため、相続を放棄する選択肢もあります。
ただし、相続放棄後に遺品整理を行うと「財産を相続する意思がある」と見なされ、相続放棄ができなくなるため注意が必要です。
生活保護費が残っていたら役所に返還する
故人の生活保護費が残っていた場合は、勝手に持ち帰ったり、貯金せずに役所に返還しましょう。
貯金してしまうと、「財力がある」と判断され葬祭扶助制度が利用できなくなくなります。
また、「財力があるのに生活保護を受けていた」と判断された場合、「徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収」されるケースも。(※2)
金銭トラブルを回避し遺品整理を無事に終わらせるためにも、残った生活保護費を見つけたらすぐに役所に返還しましょう。
「相続人も生活保護を受給している」場合には注意が必要
相続人が生活保護を受給していても、故人の遺産相続は可能です。
ただし、生活保護受給者が遺産相続をした場合は、生活保護の受給資格を満たさなくなるケースも考えられます。
遺産相続で生活に必要な資金が手元にあると判断されるためです。
生活保護法第26条の「保護の停止及び廃止」に該当すると判断された場合、遺産相続した直後から自身の生活保護の受給が停止または廃止される可能性があります。(※3)
遺品整理の費用負担を減らす方法
遺品整理でなるべく費用の負担を減らしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
以下では、遺品整理にかかる費用の負担を軽減できる方法をご紹介します。
葬祭扶助制度を利用する
「葬祭扶助制度」を利用する際は、ケースワーカーを通して申請をしましょう。
補助が受けられれば葬儀費用の自己負担が減らせ、総合的なに見ると費用軽減につながります。
ただし、「葬祭扶助制度」を利用する際は、葬儀の前に申請をしなくてはいけません。
葬儀の手続きを進めてから申請すると、「葬儀費用を支払う財力がある」と判断されるためです。
また、行政の費用でお葬式を行う場合、通夜式や告別式などを省略した「直葬」が行われ、火葬のみの葬儀となります。(※4)
売れそうなものは買取に出す
不要な遺品は、フリマアプリなどを活用して売る方法もあります。
出品した商品が売れれば、手元にお金が入り部屋も片付くでしょう。
しかし、出品するには掲載写真の撮影や商品の説明文を作成するなど手間と時間がかかります。
早く遺品を手放したいと考える方には、買取対応をしている遺品整理業者に依頼する方が楽かもしれません。
自分で遺品整理を行う
必要な遺品、不要な遺品をあらかじめ自分で仕分け作業を行い、不要な遺品だけを業者に撤去してもらいましょう。
上記は業者による仕分け作業費用がかからず、遺品整理の費用を抑えられる可能性があります。
多少費用がかかっても片付けの早さを優先したい場合は、仕分けから業者に依頼するのがおすすめです。
複数の業者に見積もりを依頼する
1社だけでは遺品整理にかかる費用の相場を把握するのは難しいでしょう。
相見積もりを取り、複数の業者を比べれば、相場を把握できたり悪質な業者を見極められたりと利点がたくさんあります。
また、安さを売りにする業者には注意が必要です。
「1LDKで5万円以下」などあまりにも安い業者は、契約後に追加料金を請求される可能性もあるため気をつけましょう。
立ち合いができない場合の業者選びの注意点
生活保護受給者の遺品整理では、親族が遠方に住んでいるケースが多く見られます。
親族が遺品整理に立ち合うのが難しい場合、とくに注意するべき業者選びのポイントは、主に以下の3つです。
➀管理会社や近隣住民への挨拶などをしっかり行っているか
遺品整理現場や周辺に連絡をせず無断で作業をすすめると、近隣トラブルを招く原因となります。
遺品整理では大きな荷物の搬出があり、騒音トラブルを招くおそれが考えられるでしょう。
とくにマンションでの作業は共用スペースを使用するため、管理会社への事前挨拶や使用時の注意点の確認は必須です。
②「報連相」を大切にコミュニケーションをとっているか
たとえば、業者が作業中にフローリングを傷つけ、事実を隠蔽した場合。
「業者のミスでは?」と不動産側が気づき依頼者に報告をしたり、依頼者から業者へ連絡しても話を流されてしまったりすると、依頼者側が負担するケースも考えられるでしょう。
遺品整理業者は故人様の大切な品物品に触れるため、「報告・連絡・相談」は必要不可欠です。
また、遺品整理では、小銭などの細かい金銭類や貴金属も取り扱います。
報連相を怠る業者のなかには、依頼者に報告せず金目のものを盗む悪質な業者も。
電話の対応や見積もり時の態度をよく観察し、細かな気づきをすぐに共有「報連相」してくれるかを確認しましょう。
➂書面での契約書や同意書はあるか
大切な遺品の整理を業者に依頼する前に、契約書や同意書があるかを確認します。
どの範囲を業者に依頼するかを双方できちんと把握しておけば、遺品の紛失などトラブルを回避できるでしょう。
また、遺品整理を業者に依頼するには、業者を利用せず1人で遺品整理をするよりも多くの費用がかかります。
口頭の約束では、契約後のトラブルを招きかねません。
後悔しないためにも、遺品整理を業者に依頼する際は口頭の約束ではなく、書面でしっかりと残しましょう。
また、良心的な業者を選ぶために、ホームページの雰囲気や口コミも確認すると良いです。
電話で問い合わせた際の対応などもチェックしてくださいね。
生活保護受給者の遺品整理はポイントを押さえて取り組もう
生活保護を受給していた家族が亡くなった場合、遺品整理費用を補助する制度などはありません。
残った受給費は返還の義務があり、生活保護費は「最低限の生活を保証する制度」のため遺品整理は含まないのです。
葬儀費用など自治体の補助を利用すれば、総合的な費用削減が可能となります。
立ち合いが難しい場合の業者選びのポイントなどをしっかりと押さえ、生活保護受給者の遺品整理をはじめましょう。
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